ラットプルダウン(lat pull down)
ラットプルダウンとは主に広背筋(こうはいきん)、大円筋(だいえんきん)、上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)を中心に鍛える筋トレ種目です。
ラットプルダウンは「チンニング(懸垂)のマシン版」と呼ばれる、頭上のバーを首の前まで引き下ろす背中の代表的なマシン種目です。用いるグリップなどにより様々なバリエーションが存在します。
「Lat」は広背筋(Latissimus Dorsi)の略で、「広背筋を引き下ろす」動作から名付けられました。逆三角形のシルエット作り+背中の翼(脇下から腰までの広がり)+姿勢改善に直結する重要種目です。
このページではラットプルダウンの正しいフォーム、動作のポイントや注意点、呼吸法などを初心者の方でも理解しやすいように画像、動画つきで解説します。
また、目的別(筋力アップ・筋肥大・ダイエット)に応じた重量、回数、セットをあわせてご紹介します。
この記事で分かること:
・ラットプルダウンで鍛えられる筋肉
・正しいフォームと動作のポイント
・呼吸法と目的別の重量・回数
・4バリエーション(フロント・ビハインドネック・パラレル・リバース)の使い分け
・関連トレーニング種目
強化される筋肉
広背筋+大円筋+背中全体を集中刺激
ラットプルダウンの特徴:
① 主働筋:広背筋
・背中の最大筋
・「逆三角形」の主役
・本種目で最大の効果
② 主働筋:大円筋
・広背筋の補助筋
・「脇下の広がり」
③ 主働筋:上腕二頭筋
・引く動作の補助
・肘関節屈曲
④ 協働筋:僧帽筋・菱形筋
・肩甲骨内転+下方回旋
・背中中央
⑤ 補助筋:三角筋後部・大胸筋
・動作の補助
「広背筋=背中の翼」:
人体最大の背中筋:
① 場所
・背中の下半分
・「脇下から腰」まで広がる
② 機能
・肩関節内転(腕を体側に引き寄せる)
・肩関節伸展
・「引く動作」の主役
③ 「翼」の役割
・発達すると
・「脇下が広がる」
・「逆三角形」を作る
④ 本種目の効果
・広背筋を最大刺激
・「背中の翼」UP
「逆三角形」の作り方:
ボディメイクの基本:
① 「逆三角形」の正体
・広い肩+くびれたウエスト
・「Vシェイプ」
② 主要因
・広背筋+三角筋側部の発達
・本種目で広背筋強化
③ 結果
・「男らしい体型」
・「美しい後ろ姿」
・女性の「くびれ」強調にも
「チンニングのマシン版」:
なぜマシンか:
① チンニング(懸垂)
・自重
・初心者には難しい
② ラットプルダウン(本記事)
・マシン
・負荷を調整可能
・初心者にも安全
③ 動作は同じ
・「上から引き下ろす」
・広背筋メイン
④ 推奨
・初心者=ラットプルダウンから
・慣れたらチンニングへ
「多関節運動(コンパウンド)」:
ラットプルダウンの特徴:
① 肩関節+肘関節+肩甲帯
・多関節を同時に動かす
② 背中+上腕を同時刺激
・効率的
③ 高重量を扱える
・筋肥大効果大
関節の動き

肩関節においては内転、肘関節においては屈曲、肩甲帯においては内転及び下方回旋が行われます。
運動方法


- バーの握り幅は肩幅より握りこぶし二個分ほど広めに握ります。
- シートに座り、パッドで太ももをしっかりと固定します。
このとき背筋群にテンションがかかるようにシート高さを調整します。 - 猫背姿勢にならないように背中をやや反らして胸を張ります。(写真1)
- 顎を上げて、肘を外側に張りながらグリップを首の付け根まで引き付けます。
このときに顎が下がってしまったり、肩甲骨の寄せ方が甘かったりすると広背筋や大円筋に刺激がいかず、上腕二頭筋にばかり効いてしまいますので十分に注意してください。(写真2) - バーを首の付け根まで十分に引き付けたら重力に逆らいながらゆっくりと開始姿勢に戻します。(運動動作中は肘を伸ばしきらないように気をつけてください)
「肩甲骨を寄せながら引く」が最重要
ラットプルダウンの本質:
① 動作の順序
・まず肩甲骨を下方+内側に
・次に肘を引き下ろす
② 「肩甲骨主導」
・肩甲骨が動いてから腕が動く
・「広背筋」から起動
③ 失敗例
・腕だけで引く
・上腕二頭筋ばかりに効く
④ 結果(正しい場合)
・広背筋+大円筋に集中
・「背中で引く」感覚
「胸を張る+背中をやや反らす」:
姿勢の維持:
① 胸を張る
・肩甲骨を寄せやすく
・「背中の翼」が広がる
② 背中をやや反らす
・「弓なり」姿勢
・広背筋がストレッチ
③ 猫背はNG
・広背筋への刺激不足
・「腕で引く」動作
「首の付け根まで引く」:
引く深さの目安:
① フィニッシュ位置
・バーが鎖骨上
・首の付け根
② 引きすぎ注意
・胸の下まで引くのはNG
・動作軸が崩れる
③ 結果
・純粋な肩関節内転
・広背筋に集中
「肘を伸ばしきらない」:
戻し動作の注意:
① 完全に伸ばすと
・負荷が逃げる
・肘関節への負担
② 一歩手前で止める
・常にテンションを維持
・広背筋を効かせ続ける
呼吸方法
- 重量が比較的軽いときは胸の動きに合わせて呼吸を行います。
すなわち胸が開くときに息を吸い、胸が閉じるときに息を吐き出します。 - 中〜高重量を用いる場合は、開始姿勢で大きく息を吸いこみ、そのまま息をとめながら(胸の膨らみを保ちながら)グリップを引っぱります。
その後、息を吐きながら開始位置までグリップを戻します。
ポイントと注意点※順不同
- グリップの握り方は親指を外して握る『サムレスグリップ』を推奨します。
サムレスグリップで握ることにより、前腕部への負担が減り、広背筋や大円筋への刺激が強く働きます。 - グリップを引っ張る際、肩甲骨の寄せ方が甘いと広背筋や大円筋への刺激が逃げてしまい上腕二頭筋ばかりに効いてしまうので気をつけましょう。
- グリップを引っ張る際、上半身を後方に倒すなどして反動を用いないよう気をつけます。
- 運動動作中は背中への刺激が逃げないようにするためにウエイトとウエイトが重ならないように気をつけます。
「サムレスグリップ」が広背筋効かせの裏ワザ
グリップの種類:
① サムアラウンドグリップ(通常)
・親指を巻きつける
・「がっちり」握る
② サムレスグリップ(本種目推奨)
・親指を外す
・4本指で引っ掛ける
・「フック」のように
③ 効果
・前腕屈筋群を使わない
・広背筋・大円筋に集中
・「効かせる」感覚UP
④ 注意
・軽重量で慣れる
・グリップが外れないように
「反動を使わない」:
最重要の注意点:
① 反動(チーティング)
・上半身を後ろに倒す
・体重を使って引く
② 反動を使うと
・広背筋への刺激不足
・「効かない」
・怪我のリスク
③ 解決法
・体幹を固定
・「背中で引く」
・ゆっくり丁寧に
「ウエイトを重ねない」:
テンション維持:
① ウエイトが重なると
・負荷が一瞬抜ける
・背中への刺激が逃げる
② 解決法
・戻し動作でも止めない
・「常にテンション」
・マインドマッスルUP
バリエーション
ラットプルダウンにはグリップの種類やその握り方などによりいくつかのバリエーションが存在します。(運動の効果はそれぞれ異なります)
- フロントプルダウン(ワイドバー)
フロントプルダウンは文字通りグリップを首の前の方に引き付けるバリエーションです。
ラットプルダウンの全てのバリエーションの中で最もスタンダードなもので安全面においても効果的であると言われています。 - ビハインドネックラットプルダウン(ワイドバー)
ビハインドネックラットプルダウンはグリップを首の後方に引き付けるバリエーションです。
ビハインドネックはフロントプルダウンに比べ、広背筋、大円筋のみならず三角筋後部や僧帽筋への刺激を高めます。
また、ラットプルダウンを行う際に上半身を思いっきり反らすなどの反動が使えない分、正しいフォームでのエクササイズが可能というのが特徴なのですが、反面、肩関節に負担がかかりすぎて肩を痛める恐れがあります。 - パラレルバーグリップラットプルダウン
フロントやバックなどの方法は広背筋、大円筋の上部外側への刺激を高めることができます。
それに対してパラレルバーグリップを用いたバリエーションは広背筋、大円筋の下部と菱形筋群の刺激を高めることができるというのが特徴です。 - リバースグリップラットプルダウン
逆手で且つ、グリップ幅を狭く握るというラットプルダウンのバリエーションの一つです。
他のバリエーションに比べて上腕二頭筋への関与が高いため高重量を扱いやすいというのが特徴です。
「4バリエーション」で背中を多角的に攻める
ラットプルダウンの完全網羅:
① フロントプルダウン(基本・推奨)
・ワイドバー+首の前
・広背筋上部外側
・安全+効果的
② ビハインドネックラットプルダウン
・ワイドバー+首の後ろ
・広背筋+三角筋後部+僧帽筋
・肩関節リスク
③ パラレルバーグリップラットプルダウン
・パラレルバー(縦持ち)
・広背筋下部+菱形筋
・「分厚い背中」
④ リバースグリップラットプルダウン
・逆手+ナローグリップ
・広背筋+上腕二頭筋
・高重量扱える
⑤ 推奨
・初心者=フロントから
・中・上級者=3〜4種を組み合わせ
・「多角的な背中」
反復回数とセット数
目的別に応じた反復回数とセット数をご紹介します。
- 筋力アップ
筋トレの目的が筋力アップなら運動動作が6~8回で限界を迎えるような高負荷でトレーニングを行う必要があります。 - 筋肥大
筋トレの目的が筋肥大なら運動動作が12~15回で限界を迎えるような中負荷でトレーニングを行う必要があります。 - ダイエット
筋トレの目的がダイエットなら運動動作が20回以上反復可能な低負荷でトレーニングを行う必要があります。
※初心者の方は正確なフォームで10回~15回程度反復できる重量で行います。
※セット数は3~4セットくらいで行います。
ラットプルダウンと他の背中種目の使い分け
各種目の特性:
「チンニング(懸垂)」:
① 特性
・自重
・上から引き下ろす
② 効果
・広背筋+大円筋+上腕二頭筋
・「逆三角形」
③ 注意
・初心者には難
「ラットプルダウン(本記事)」:
① 特性
・マシン
・負荷調整可能
② 効果
・広背筋+大円筋+上腕二頭筋
・「チンニングと同じ動作」
③ 安全性
・初心者にも安全
「ベントオーバーローイング」:
① 特性
・バーベル+前傾
・水平に引く
② 効果
・広背筋+僧帽筋+菱形筋
・「分厚い背中」
「使い分け」:
① 「背中の翼」=ラットプルダウン(本記事)/チンニング
② 「背中の厚み」=ローイング系
③ 両方併用=完璧
「背中メニュー」での位置づけ:
理想的な順序:
① デッドリフト(多関節・最高重量)
② チンニング(自重・最強の引き下ろし)
③ ラットプルダウン(本記事)(マシン・広背筋特化)
④ ベントオーバーローイング(水平引き)
⑤ ロウプーリー(マシン・水平引き)
⑥ プルオーバー(フィニッシャー)
「逆三角形」効果:
男性に人気の理由:
① 広背筋強化
・「翼が広がる」
・「逆三角形」UP
② 大円筋強化
・「脇下の厚み」
③ ボディメイク
・「Vシェイプ」
・「男らしい体型」
「美姿勢」効果:
女性にも有効:
① 「猫背改善」
・長時間PC・スマホ対策
・胸を張る習慣
② 「肩こり予防」
・菱形筋・僧帽筋強化
③ 「美しい後ろ姿」
・背中のラインUP
④ 「くびれ」強調
・広背筋発達→ウエストとのコントラスト
「スポーツパフォーマンス」:
該当スポーツ:
① 水泳
・「引く動作」の主役
② 柔道・レスリング
・引き寄せ動作
③ クライミング
・「ぶら下がる」+引く
④ ボート
・パドル動作
⑤ ラグビー・アメフト
・タックル
「現代人の背中の弱化問題」:
なぜ背中トレが重要か:
① 長時間PC・スマホ
・背中の弱化
・「猫背」
② 解決法
・背中トレ+胸ストレッチ
・本種目=最も効率的
③ 結果
・姿勢改善
・肩こり予防
「ラットプルダウンの3大効果」:
① 逆三角形のシルエット作り
・広背筋+大円筋強化
② 姿勢改善+肩こり予防
・菱形筋・僧帽筋強化
③ チンニングへの移行
・初心者から上級者へ
「初心者の注意点」:
安全な始め方:
① 軽重量から
・20〜30kg程度
・フォーム習得優先
② 漸進的負荷
・5〜10kgずつUP
③ フォーム優先
・「肩甲骨主導」
・「背中で引く」感覚
関連する効果:
① 広背筋+大円筋の発達
・「逆三角形」UP
② 僧帽筋・菱形筋・三角筋後部強化
・背中全体
③ 上腕二頭筋強化
・「引く動作」
④ 姿勢改善
・「猫背改善」
・「美姿勢」
⑤ 肩こり予防
・背中の機能改善
⑥ スポーツパフォーマンスUP
・水泳・柔道・クライミング
⑦ チンニングへの移行
関連する障害の予防+注意:
① 肩関節障害
・特にビハインドネック
・無理しない
② 腰痛
・反動を使わない
③ 上腕二頭筋長頭腱炎
・肩甲骨を寄せ続ける
④ 首痛
・無理に顎を上げない
YOU TUBE
関連種目
■ フリーウエイト・トレーニング■
【ベントオーバーローイング・ワンハンド・ダンベルローイング・ローイング・ダンベル・プルオーバー】
■ マシン・トレーニング■
【ロウプーリー・プルオーバー・ウィズ・マシン】
■ 自重トレーニング■
【チンニング】
■ ボールエクササイズ■
【プルオーバー・ウィズ・ソフトギム】
まとめ
ラットプルダウンについて解説してきた内容を整理します。
・広背筋+大円筋+上腕二頭筋+僧帽筋+菱形筋+三角筋後部を鍛える
・「チンニング(懸垂)のマシン版=逆三角形作りの代表種目」
・「多関節運動(コンパウンド)」
・バーの握り幅は肩幅+拳2個分
・シートに座る+パッドで太もも固定
・背中をやや反らして胸を張る(最重要)
・肩甲骨を寄せながら引く(広背筋主導)
・顎を上げて、肘を外側に張りながら引く
・グリップを首の付け根まで引き付ける
・反動を使わない
・サムレスグリップ(広背筋に集中)
・肘を伸ばしきらない(テンション維持)
・ウエイトを重ねない
・軽重量=胸の動きに合わせて呼吸/中〜高重量=バルサルバ法
・目的別:筋力6〜8回/筋肥大12〜15回/ダイエット20回以上
・初心者は10〜15回×3〜4セット
・4バリエーション(フロント/ビハインドネック/パラレル/リバース)
ラットプルダウンは広背筋+大円筋の集中強化=「逆三角形のシルエット」UP+姿勢改善(猫背改善・美姿勢)+肩こり予防+チンニング(懸垂)への移行種目+スポーツパフォーマンスUP+4バリエーションで多角的な背中強化に直結する優れた背中マシン種目です。デッドリフト(多関節)+チンニング(自重)+ラットプルダウン(マシン・広背筋特化・本記事)+ベントオーバーローイング(水平引き)を組み合わせることで、背中を多角的に発達させることができます。肩甲骨を寄せながら引く+胸を張る+サムレスグリップ+反動を使わない+4バリエーション活用+正確なフォームでラットプルダウンの効果を最大化しましょう。
参考文献・出典
・厚生労働省 e-ヘルスネット「運動・トレーニング」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・日本ストレングス&コンディショニング協会(JATI)https://www.jati.jp/
・日本臨床スポーツ医学会「スポーツ障害」http://www.rinspo.jp/
・日本整形外科学会「肩関節疾患・スポーツ障害」https://www.joa.or.jp/
・日本肩関節学会https://katakansetsu.jp/





