インクライン・バーベルベンチプレス(Incline barbell bench press)
インクライン・バーベルベンチプレスとは主に大胸筋(だいきょうきん)を中心に三角筋(さんかくきん)、上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)を鍛える筋トレ種目です。
エクササイズの際に角度のついたインクラインベンチを用いることで大胸筋上部に強い刺激をもたらすことができます。さらに本記事ではスミスマシンを使うバージョンを解説します。スミスマシンを使うことで軌道が固定され、初心者でも安全に高重量を扱えます。
このページではインクライン・バーベルベンチプレスの正しいフォーム、動作のポイントや注意点、呼吸法などを初心者の方でも理解しやすいように画像つきで解説します。また、目的別(筋力アップ・筋肥大・ダイエット)に応じた重量、回数、セット、フラットベンチプレスとの違いまで包括的にご紹介します。
この記事で分かること:
・インクライン・バーベルベンチプレス(スミスマシン)で鍛えられる筋肉
・正しいフォームとベンチ角度のポイント
・スミスマシンを使う利点
・フラットベンチプレスとの違い
・関連トレーニング種目
強化される筋肉
大胸筋上部(鎖骨部)の発達
インクライン種目は大胸筋上部(鎖骨部繊維)を選択的に刺激:
① 大胸筋上部(鎖骨部)
・鎖骨内側1/2から起こる
・「鎖骨ライン」を作る
・「胸の上の盛り上がり」
② 三角筋前部
・肩関節屈曲を補助
・水平内転+上方方向
③ 上腕三頭筋
・肘関節伸展
・フィニッシュ動作
「大胸筋3部位の中で最も鍛えにくい」:
大胸筋上部は意識しないと発達しない部位:
① フラットベンチプレス=胸肋部(中部)が主役
② インクライン=鎖骨部(上部)を選択的に
③ デクライン=腹部(下部)
「逆三角形のシルエット」を作るために大胸筋上部の発達は必須です。
「鎖骨ライン」の重要性:
大胸筋上部の発達が美しい胸を作る:
① 鎖骨ライン
・鎖骨の下の盛り上がり
・「胸の山」
② 「Tシャツ姿」での印象
・胸が見えるシャツで効果絶大
・男性的な印象
③ 上方からの厚み
・立体的な胸
関節の動き

肩関節においては水平内転、肘関節においては伸展、肩甲帯においては外転動作が行われます。
運動方法


- インクラインベンチの背もたれの角度をあらかじめ30〜40度くらいになるようにします。
- インクラインベンチに座って、スミスマシンのバーを降ろしたときに自分の鎖骨のやや下あたりにバーがくるようにベンチを位置を調整します。
- インクラインベンチ台の上に仰向けに寝ます。 肩甲骨を引き寄せながらグリップを握ります。 このときグリップの握り幅は肩幅の1.5倍程度に広げておきます。
- 頭部、肩部、臀部はベンチ台にしっかり固定し、足裏を床に置きます。 このとき腰の部分に手のひら一枚分の隙間ができるようにします。(写真1)
- ラックからバーをはずし、コントロールしながらゆっくりバーを胸の上に下ろします。(写真2)
- 肩甲骨を寄せた状態を保ちながら開始位置までバーを持ち上げます。
「ベンチ角度30〜40度」が重要
インクラインの角度は大胸筋上部への刺激を決める:
① 30度未満
・大胸筋中部が主役
・通常のベンチプレスに近い
② 30〜40度(推奨)
・大胸筋上部が主役
・最も効果的
③ 45度以上
・三角筋前部が主役
・ショルダープレスに近づく
「45度の罠」:
多くの人がやりがちな失敗:
・「高い方が効きそう」と45度以上に設定
・三角筋ばかり効く
・大胸筋上部の刺激が低下
30〜40度が「黄金角度」です。
呼吸方法
- 重量が比較的軽いときは胸の動きに合わせて呼吸を行います。
すなわち胸が開くときに息を吸い、胸が閉じるときに息を吐き出します。 - 中〜高重量を用いる場合は、開始姿勢で大きく息を吸いこみ、そのまま息をとめながら(胸の膨らみを保ちながら)バーを胸に下ろします。
バーが胸に軽く触れたら息を吐きながら開始位置までバーを持ち上げます。
ポイントと注意点※順不同
- グリップの握り方は親指をしっかり巻きつけて行う『サムアラウンドグリップ』を用いるようにします。
- 運動動作中は手首が過度に反らないようにします。
手首が反りすぎてしまうと手首を痛める恐れがあります。 - 運動動作中は常に肘はバーの真下にくるようにします。
肘の位置がずれてしまうと動作中にバランスを崩してしまい思わぬケガをしてしまうことがあります。 - 運動動作中は常に肩甲骨と肩甲骨をお互いに引き寄せておきます。
肩甲骨の寄せが甘いと肩関節や上腕二頭筋の長頭腱を痛めてしまう恐れがあります。 - 初心者、初級者の方はバーを胸の上でバウンドさせないようにします。
チーティング(はずみ、反動)を用いることで高重量は挙げやすくなりますが、胸への刺激が少なくなってしまいます。
また、このようなやり方を行ってしまうと肋骨や胸骨を痛めてしまう恐れがあります。 - バーを差し上げる際にはしっかりと顎を引き寄せます。
バーを差し上げるときに後頭部をインクラインベンチに押しつけるような動作をしてしまうと、力が十分に発揮できないばかりか首を痛めてしまう恐れもあります。
「スミスマシン」を使う利点
スミスマシンならではの利点:
① 軌道が固定
・バーが上下のみ動く
・左右のバランス不要
② 安全性が高い
・セーフティ機能
・1人でも安全
・セーフティラックあり
③ 初心者向け
・フォーム習得が容易
・不安なく挑戦できる
④ 高重量にチャレンジ
・失敗時の安全
・限界まで追い込める
⑤ 大胸筋への集中
・バランス筋への意識不要
・狙った筋肉に集中
「フリーウェイトとの違い」:
スミスマシン vs フリーウェイトの比較:
① フリーウェイト
・体幹・バランス筋も鍛える
・機能的
・上級者向け
② スミスマシン(本記事)
・狙った筋肉に集中
・安全性が高い
・初心者・中級者に最適
③ 推奨される使い分け
・初心者=スミスマシン
・上級者=フリーウェイト
・両方併用がベスト
反復回数とセット
目的別に応じた反復回数とセット数をご紹介します。
- 筋力アップ
筋トレの目的が筋力アップなら運動動作が6〜8回で限界を迎えるような高負荷でトレーニングを行う必要があります。 - 筋肥大
筋トレの目的が筋肥大なら運動動作が12〜15回で限界を迎えるような中負荷でトレーニングを行う必要があります。 - ダイエット
筋トレの目的がダイエットなら運動動作が20回以上反復可能な低負荷でトレーニングを行う必要があります。
※初心者の方は正確なフォームで10回〜15回程度反復できる重量で行います。
※セット数は3〜4セットくらいです。
「フラットベンチプレスより軽い重量で」:
インクラインの重量設定:
① フラットの70〜80%
・角度がついている分軽くなる
・大胸筋上部の弱さを意識
② フォーム優先
・重量より正確性
・角度+肩甲骨を意識
インクライン・バーベルベンチプレス vs フラットベンチプレス
両種目を使い分ける重要性:
「インクラインベンチプレス」の特徴:
① 大胸筋上部を主に刺激
② 鎖骨ラインを作る
③ 三角筋前部も活動
④ ベンチ角度30〜40度
「フラットベンチプレス」の特徴:
① 大胸筋中部を主に刺激
② 厚みのある胸を作る
③ パワーに優れる
④ ベンチは水平
「胸トレの完成形」:
理想的な胸トレメニュー:
① フラットベンチプレス(中部)
② インクラインベンチプレス(上部・本記事)
③ デクラインベンチプレス(下部)
④ ダンベルフライ(形を整える)
これら4種目で大胸筋全体が発達。
「現代人の胸トレ」問題:
現代生活での課題:
① 大胸筋上部の発達不足
・フラットベンチプレスのみでは限界
・「胸の上が薄い」
② 巻き肩・猫背
・大胸筋短縮
・姿勢の崩れ
③ 解決法
・インクライン追加
・大胸筋上部の発達
・姿勢改善
「インクラインの効果」:
① 鎖骨ラインの発達
・美しい胸の形
・「胸の山」
② 肩こり予防
・大胸筋上部の発達
・姿勢改善
③ ベンチプレス全体のパワーアップ
・大胸筋全体の発達
・フラットの記録UP
関連する障害の予防:
① 巻き肩
・大胸筋ストレッチ
・菱形筋・僧帽筋中部下部強化
② 肩関節障害
・適切なフォーム
・ローテーターカフ強化
③ 手首・肘の障害
・サムアラウンドグリップ
・適切な角度
関連種目
■ フリーウエイト・トレーニング■
【バーベルベンチプレス・ダンベルフライ・インクライン・ダンベルフライ】
■ マシン・トレーニング■
【ペックデックフライ・ケーブルクロスオーバー】
■ 自重トレーニング■
【プッシュアップ・ウォールプッシュアップ・スキャプラプッシュアップ】
■ ボールエクササイズ■
【ダンベルプレス・ウィズ・バランスボール・メディシンボールプッシュアップ・ボールスクイーズ・インクラインダンベルプレス・ウィズ・バランスボール・リバース・バランスプッシュアップ・バランスプッシュアップ】
まとめ
インクライン・バーベルベンチプレス(スミスマシン)について解説してきた内容を整理します。
・大胸筋上部+三角筋前部+上腕三頭筋を鍛える
・「大胸筋上部のキング種目」=鎖骨ラインを作る
・ベンチ角度30〜40度が黄金角度
・45度以上は三角筋ばかり効くので注意
・スミスマシン=軌道固定+安全+初心者向け
・仰向け+肩甲骨を寄せる+足裏を床に
・グリップ幅は肩幅の1.5倍
・サムアラウンドグリップ
・軽重量=胸の動きに合わせて呼吸
・中〜高重量=バルサルバ法
・目的別:筋力6〜8回/筋肥大12〜15回/ダイエット20回以上
・フラットの70〜80%の重量
・初心者は10〜15回×3〜4セット
・フラット+インクラインで大胸筋全体の発達
インクライン・バーベルベンチプレス(スミスマシン)は大胸筋上部の発達+鎖骨ラインの形成+逆三角形のシルエット作りに最適な種目です。スミスマシンの安全性を活かして、大胸筋上部を効率的に発達させましょう。30〜40度のベンチ角度+正しいフォーム+肩甲骨の寄せでインクラインプレスの効果を最大化しましょう。
参考文献・出典
・厚生労働省 e-ヘルスネット「運動・トレーニング」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・日本ストレングス&コンディショニング協会(JATI)https://www.jati.jp/
・日本パワーリフティング協会https://www.jpa-powerlifting.or.jp/
・日本臨床スポーツ医学会「スポーツ障害」http://www.rinspo.jp/
・日本整形外科学会「肩関節疾患・スポーツ障害」https://www.joa.or.jp/





