スキャプラプッシュアップ(scapula push up)
スキャプラプッシュアップとは主に前鋸筋(ぜんきょきん)を中心に鍛える筋トレ種目です。
スキャプラプッシュアップは「肩甲骨を動かすプッシュアップ=前鋸筋スタビライザー強化種目」と呼ばれる、肘を伸ばしたまま肩甲骨だけを動かす特殊なプッシュアップです。
主に前鋸筋を動かす(肩甲骨の外転)ことで肩甲帯周りの筋力強化をはかります。
通常のプッシュアップが大胸筋メインなのに対し、本種目は「前鋸筋(肩甲骨スタビライザー)の集中強化+巻き肩予防+翼状肩甲予防+ベンチプレスの補助+肩関節障害予防」に直結する、リハビリ・コンディショニング分野で重要視される名種目です。
またバランスボールを利用することでスタビリティ(安定性)能力を養うことができます。
このページではスキャプラプッシュアップの正しいフォーム、動作のポイントや注意点、呼吸法などを初心者の方でも理解しやすいように画像、動画つきで解説します。
この記事で分かること:
・スキャプラプッシュアップで鍛えられる筋肉
・正しいフォームと動作のポイント
・呼吸法と肩甲骨外転のコツ
・巻き肩・翼状肩甲予防効果
・関連トレーニング種目
強化される筋肉
前鋸筋=「肩甲骨の縁の下の力持ち」
スキャプラプッシュアップの特徴:
① 主働筋:前鋸筋
・「ボクサー筋」とも呼ばれる
・肩甲骨外転の主役
・本種目で最大の効果
「前鋸筋」の解剖:
肩甲骨スタビライザーの主役:
① 場所
・肋骨の側面
・肩甲骨の内側縁に付着
② 機能
・肩甲骨外転(前方へ)
・肩甲骨を肋骨に密着
・「腕を前に押し出す」動作
③ 別名「ボクサー筋」
・パンチ動作で活躍
・「最後の押し」を生む
④ 弱化の影響
・「翼状肩甲(よくじょうけんこう)」=肩甲骨が浮く
・「巻き肩」
・肩関節障害
「肩甲骨スタビライザー」:
肩関節の支え:
① 肩甲骨は浮いている骨
・胸郭の上を滑る
・「肩甲胸郭関節」
② スタビライザー筋
・前鋸筋(本種目)
・菱形筋(拮抗筋)
・僧帽筋
③ 役割
・肩甲骨を安定
・肩関節の機能を支える
「前鋸筋と菱形筋の拮抗関係」:
機能解剖の核:
① 前鋸筋
・肩甲骨外転(前方へ)
② 菱形筋
・肩甲骨内転(脊柱方向へ)
③ 拮抗関係
・互いに対をなす
④ 本種目で連動性UP
・前鋸筋+菱形筋の協調
⑤ 結果
・肩甲骨の動きが滑らか
・肩関節障害予防
「単関節運動(アイソレーション)」:
スキャプラプッシュアップの特徴:
① 肩甲帯のみ
・肘は伸ばしたまま
・前鋸筋を選択的に刺激
② 通常のプッシュアップとの違い
・通常=肘屈伸+大胸筋メイン
・本種目=肩甲骨外転+前鋸筋メイン
③ 結果
・前鋸筋への集中
・「効かせる」感覚UP
「巻き肩予防」効果:
姿勢への効果:
① 「巻き肩」の原因
・前鋸筋の弱化
・大胸筋・小胸筋の硬化
② 本種目の効果
・前鋸筋強化
・肩甲骨の動的安定
③ 結果
・「巻き肩改善」
・「美姿勢」UP
「翼状肩甲予防」効果:
スポーツ選手必須:
① 翼状肩甲(よくじょうけんこう)
・肩甲骨が浮く=天使の羽のような状態
・前鋸筋弱化が原因
② 本種目の効果
・前鋸筋強化
・肩甲骨を肋骨に密着
③ 結果
・「翼状肩甲」改善
・肩関節の機能UP
関節の動き

運動方法


- 両手の幅を肩幅より1握り拳分だけ広くし、胸を張り、肩甲骨を中央に寄せながらバランスボール上に置きます。
このとき腰が反らないように体幹部をしっかり固定し、両足をそろえておきます。(写真1) - 肩甲骨と肩甲骨を寄せた状態から今度はゆっくりと肩甲骨がお互い離れるように脊柱から外側(肩甲帯の外転)に向けて遠ざけていきます。(動作中は両肘を伸ばしたままにします)(写真2)
- 十分に肩甲骨を外転させたらゆっくりと開始姿勢まで戻します。
「肘を伸ばしたまま+肩甲骨だけを動かす」が最重要
スキャプラプッシュアップの本質:
① 肘は終始伸ばしたまま
・肘の屈伸はしない(通常プッシュアップとの違い)
② 動かすのは肩甲骨のみ
・「肩甲骨外転⇔内転」
・胸郭が上下
③ 開始位置(写真1)
・肩甲骨を寄せる(内転位)
・胸を張る
④ フィニッシュ位置(写真2)
・肩甲骨を離す(外転位)
・背中が丸まる(猫背のような姿勢)
⑤ 結果
・前鋸筋への純粋な刺激
・大胸筋・三角筋への関与少
「バランスボール vs 床」:
実施環境の選択:
① バランスボール上(本記事)
・不安定
・スタビリティ能力UP
・体幹強化も
・中・上級者向け
② 床(プッシュアップ姿勢)
・安定
・初心者向け
・フォーム習得が容易
③ 推奨
・初心者=床から始める
・慣れたらバランスボール
「胸郭が上下する」:
動作の本質:
① 肩甲骨外転
・胸郭が下がる
・「背中が丸まる」
② 肩甲骨内転
・胸郭が上がる
・「胸を張る」
③ 効果
・胸郭の柔軟性UP
・肩甲骨の動き改善
「腰を反らさない」:
体幹固定の重要性:
① 腰が反ると
・前鋸筋への刺激分散
・腰痛リスク
② 解決法
・体幹を固定
・「プランク」の体幹
呼吸方法
- 基本的に胸郭の動きに合わせて呼吸動作を行います。
すなわち、肩甲骨を外側に広げるときに息を吐き、肩甲骨を内側に狭めるときに息を吸うようにします。
ポイントと注意点※順不同
- 運動動作中どうしても腰が反ってしまう方は腹直筋を充分強化してからこのエクササイズにトライした方が良いと思います。
- このエクササイズは前鋸筋のみならず前鋸筋の拮抗筋である菱形筋群との連動性を高めることができます。
- このエクササイズはバランスボールを用いてプッシュアップの形で行なうことで、体幹部の固定力を高め且つスタビリティー能力を養うことができます。
- バランスボールを用いてこのエクササイズを行うのが困難ならバランスボールをつかわずにプッシュアップの姿勢で行います。
「前鋸筋⇔菱形筋」の連動性を高める
スキャプラプッシュアップの隠れた効果:
「前鋸筋と菱形筋の協調」:
なぜ重要か:
① 前鋸筋(外転)
・肩甲骨を前方へ
② 菱形筋(内転)
・肩甲骨を脊柱方向へ
③ 拮抗関係
・互いに対をなす
・「綱引きバランス」
④ 本種目で両方を連動
・外転=前鋸筋働く
・内転=菱形筋働く
・「フル可動域」で連動
⑤ 結果
・肩甲骨の動き滑らか
・肩関節障害予防
「バランスボールの利点」:
なぜ推奨か:
① 不安定面で実施
・体幹固定力UP
・「スタビリティ能力」養成
② 「機能的な強さ」
・静的安定
・「コア」強化
③ 結果
・「前鋸筋+体幹」同時強化
・スポーツパフォーマンスUP
「腹直筋強化が先決」:
該当者のアドバイス:
① 腰が反る方
・腹直筋弱化
・体幹固定不能
② 解決法
・クランチ・プランクで腹直筋強化
・その後本種目に挑戦
③ 結果
・「正しいフォーム」で実施可能
反復回数とセット
スキャプラプッシュアップは基本的に高回数行ないます。
「高回数の理由」:
前鋸筋の特性:
① 前鋸筋は持久力タイプ
・姿勢維持に常時関与
・「高回数」に反応
② 推奨
・15〜30回×3〜4セット
・軽負荷(自重)
③ 結果
・「効かせる」感覚UP
・持久力強化
「セット数」:
一般的な目安:
① 3〜4セット
・各セット15〜30回
② インターバル
・30秒〜1分
スキャプラプッシュアップと他のプッシュアップの使い分け
各種目の特性:
「通常のプッシュアップ」:
① 特性
・肘屈伸+自重
② 効果
・大胸筋+三角筋+三頭筋
「ウォールプッシュアップ」:
① 特性
・立位+壁
② 効果
・大胸筋(軽負荷)
「スキャプラプッシュアップ(本記事)」:
① 特性
・肘伸ばしたまま+肩甲骨のみ動かす
・バランスボールまたは床
② 効果
・前鋸筋+菱形筋連動
・「肩甲骨スタビリティ」
「使い分け」:
① 大胸筋強化=通常プッシュアップ
② 初心者の大胸筋強化=ウォールプッシュアップ
③ 前鋸筋・肩甲骨スタビリティ=スキャプラプッシュアップ(本記事)
④ 両方併用=完璧な胸+肩甲骨
「胸メニュー」での位置づけ:
理想的な順序:
① スキャプラプッシュアップ(本記事)(ウォームアップ・前鋸筋活性化)
② ベンチプレス(多関節・高重量)
③ プッシュアップ(自重)
④ ダンベルフライ(ストレッチ位)
「ベンチプレスの補助種目」:
なぜ補助か:
① ベンチプレスの最後の押し
・前鋸筋がフィニッシュを担う
② 前鋸筋弱化の影響
・ベンチプレスの重量伸びない
・肩関節への負担
③ 本種目で補強
・前鋸筋強化
・「ベンチプレスのパフォーマンスUP」
「ボクシング・パンチ動作」:
なぜ「ボクサー筋」か:
① パンチ動作
・「最後の伸び」=前鋸筋
・肩甲骨外転+腕の伸展
② 本種目で強化
・パンチ力UP
・「リーチ」延長
③ 該当スポーツ
・ボクシング
・武道・格闘技
・バレーボール
・野球(ピッチング)
「スポーツパフォーマンス」:
該当スポーツ:
① ボクシング・空手
・パンチ・突き
② バレーボール
・スパイク
③ 野球(ピッチング)
・投球動作
④ テニス・バドミントン
・サーブ・スマッシュ
⑤ 水泳
・クロール・バタフライ
「リハビリ・障害予防」:
医療現場での活用:
① 肩関節術後リハビリ
・前鋸筋の再教育
② インピンジメント症候群予防
・肩甲骨の動的安定
③ 翼状肩甲の改善
・長胸神経麻痺後の機能回復
④ 五十肩の予防+改善
・肩甲骨機能改善
「現代人の肩甲骨弱化問題」:
なぜ前鋸筋強化が重要か:
① 長時間PC・スマホ
・前鋸筋使わない
・「巻き肩」「猫背」
② 「翼状肩甲」増加
・運動不足
③ 解決法
・本種目+肩甲骨ストレッチ
・定期的に
「スキャプラプッシュアップの3大効果」:
① 前鋸筋の集中強化=「肩甲骨スタビライザー」
・肩関節障害予防
② 巻き肩・翼状肩甲予防+姿勢改善
・「美姿勢」UP
③ ベンチプレスの補助+スポーツパフォーマンスUP
・「ボクサー筋」強化
「初心者の注意点」:
安全な始め方:
① 床から始める
・バランスボールなし
・フォーム習得優先
② フォーム優先
・「肘を伸ばしたまま」
・「肩甲骨のみ」動かす
・「腰を反らさない」
③ 慣れたらバランスボール
・体幹固定力UP
④ 高回数
・15〜30回から
関連する効果:
① 前鋸筋の発達
・「ボクサー筋」強化
② 菱形筋との連動性UP
・肩甲骨の動き改善
③ 巻き肩予防+改善
・「美姿勢」
④ 翼状肩甲予防+改善
⑤ 肩関節障害予防
・インピンジメント症候群
・五十肩
⑥ ベンチプレスの補助
・競技力UP
⑦ スポーツパフォーマンスUP
・ボクシング・バレー・野球
⑧ 体幹強化(バランスボール使用時)
関連する障害の予防+注意:
① 肩関節障害
・本種目で予防
② 腰痛
・体幹固定
・腹直筋強化が先
③ 手首障害
・手首が反らないように注意
YOU TUBE
関連種目
■ フリーウエイト・トレーニング■
【バーベルベンチプレス・ダンベルフライ・インクライン・バーベルベンチプレス(スミスマシン)・インクライン・ダンベルフライ】
■ マシン・トレーニング■
【ペックデックフライ・ケーブルクロスオーバー】
■ 自重トレーニング■
【プッシュアップ・ウォールプッシュアップ】
■ ボールエクササイズ■
【ダンベルプレス・ウィズ・バランスボール・メディシンボールプッシュアップ・ボールスクイーズ・インクラインダンベルプレス・ウィズ・バランスボール・リバース・バランスプッシュアップ・バランスプッシュアップ】
まとめ
スキャプラプッシュアップについて解説してきた内容を整理します。
・前鋸筋を鍛える(中心)+菱形筋との連動性UP
・「肩甲骨を動かすプッシュアップ=前鋸筋スタビライザー強化種目」
・「単関節運動(アイソレーション種目)」+自重
・手幅は肩幅+拳1個分
・胸を張る+肩甲骨を中央に寄せる=開始位置
・バランスボール上(推奨)or床(初心者)
・腰を反らさない=体幹固定
・両足はそろえる
・肘は終始伸ばしたまま(最重要・通常プッシュアップとの違い)
・肩甲骨だけを動かす(外転⇔内転)
・肩甲骨外転で胸郭が下がる=背中が丸まる
・肩甲骨内転で胸郭が上がる=胸を張る
・息を吐きながら外転、吸いながら内転
・高回数(15〜30回)×3〜4セット
・軽負荷(自重)から
・初心者は床から、慣れたらバランスボール
スキャプラプッシュアップは前鋸筋(ボクサー筋)の集中強化=「肩甲骨スタビライザー」+菱形筋との連動性UP+巻き肩予防+翼状肩甲予防+肩関節障害予防(インピンジメント・五十肩)+姿勢改善(「美姿勢」)+ベンチプレスの補助種目+スポーツパフォーマンスUP(ボクシング・バレー・野球)+体幹強化(バランスボール使用時)+リハビリ・コンディショニング分野で重要に直結する優れた肩甲骨スタビライザー種目です。通常のプッシュアップ(大胸筋)+スキャプラプッシュアップ(前鋸筋・本記事)を組み合わせることで、胸+肩甲骨を多角的に発達させることができます。肘を伸ばしたまま+肩甲骨のみ動かす+胸郭の上下+腰を反らさない+高回数+正確なフォームでスキャプラプッシュアップの効果を最大化しましょう。
参考文献・出典
・厚生労働省 e-ヘルスネット「運動・トレーニング」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・日本ストレングス&コンディショニング協会(JATI)https://www.jati.jp/
・日本臨床スポーツ医学会「スポーツ障害」http://www.rinspo.jp/
・日本整形外科学会「肩関節疾患・スポーツ障害」https://www.joa.or.jp/
・日本肩関節学会https://katakansetsu.jp/





