トレーニングには、基礎となる法則と、3つの原理、5つの原則があります。この法則・原理・原則を知っているかいないかで、トレーニングの効果に大きな差が生まれます。また、ケガなどを防ぐ上でも、これらを理解することはとても重要です。
ここでいうトレーニングとは、筋トレ、ストレッチ、有酸素運動などを指し、この原理・原則はすべての運動に当てはまります。
筋肉を効果的に鍛えるにはルーの法則を理解する必要がある
ルーの法則というのは『筋肉は適度に使うと発達する』『筋肉は使わないと萎縮する』『筋肉は使いすぎると(過度に使うと)萎縮する』という法則です。
ドイツの生物学者ルーが提唱したもので、『ヒトの器官・機能は、適度に使えば発達し、使わなければ退化・萎縮する』という意味です。この法則は『ルーの三大法則』『ルーの三原則』と呼ばれることもあります。トレーニングの原理・原則は、いわばこのルーの法則を実践的に落とし込んだものといえます。
ルーの法則をもう少し具体化したものがトレーニングの3大原理です
上記のルーの法則をもう少し具体化したものが、トレーニングの3大原理です。内容的に特別難しいものではありませんが、トレーニングを効果的に行うためには理解しておく必要があります。
トレーニングの原理には、
- 過負荷の原理
- 可逆性の原理
- 特異性の原理
があります。
1. 過負荷の原理
過負荷の原理とは、トレーニングにおいて何かしらの運動効果を望むのであれば、普段、日常生活で体験しているよりも重い運動負荷でトレーニングを行わないと体力は向上しない、という原理のことです。過負荷の原理は「オーバーロード」と呼ばれることもあります。
筋力については、ドイツのT・ヘッティンガーが次のように報告しています。
- 最大筋力の20%以下の筋力を発揮するトレーニングでは、トレーニングを行っていても筋力は低下していく。
- 最大筋力の20〜30%の筋力を発揮するトレーニングでは、筋力は増加しない(低下もしない)。
- 最大筋力の40〜50%以上の筋力を発揮するトレーニングでは、筋力は向上する。
ここでヘッティンガーは主に筋力について述べていますが、柔軟性、全身持久力なども含め、運動効果を得るためには、自身の身体に非日常的なストレスをかける必要があります。つまり、日常生活と同レベルの運動強度を用いていても、それはトレーニングとは呼べないということです。
筋力についてもう少し詳しく述べると、筋力アップ、筋肥大(きんひだい)、パワー、筋持久力(きんじきゅうりょく)など、目的によって運動強度や量に変化をもたせなければなりません。一般的には、筋力強化のためには最大筋力の80〜90%の負荷で5〜10回の反復を3〜4セットほど、筋肥大では60〜80%の負荷で10〜15回を3〜4セット、筋持久力では30〜50%の負荷で20〜60回の反復を3〜4セットで実施するのが効果的だとされています。
2. 可逆性の原理
可逆性(かぎゃくせい)の原理とは、『トレーニングで得られた能力は、トレーニングを行っている間は維持・向上するが、止めてしまうと徐々に消失していく』という原理のことです。
また、トレーニングによって得られた運動効果は、トレーニング期間が長ければ落ち方は緩やかで、期間が短ければ効果の消失がきわめて速い傾向にあります。一方、自転車に乗るといった技術的な能力は、一度身につけてしまえば(運動中枢神経が技術を記憶するため)、長年乗っていなくてもある程度維持することができます。
長期間に渡ってトレーニングを続けた方は、トレーニングを止めても体力の落ち方が非常に緩やかで、再開したときには比較的短期間で効果が元に戻ることが知られています。これは俗に「マッスルメモリー」と呼ばれています。
3. 特異性の原理
特異性の原理とは、『トレーニングの効果は、行ったトレーニングの内容に応じて特異的に向上する』という原理のことです。
つまり、普段ジョギングを行っている人はスタミナ(全身持久力)は向上しますが、筋力の向上にはあまり結びつきません。自分の目的が筋力アップなら、筋トレを行った方がよっぽど効率が良い、ということです。目的と手段を一致させることが大切だということを示しています。
トレーニングの5大原則、これを理解しているかいないかで結果が大きく違ってきます
トレーニングの原則には、
- 漸進性の原則
- 全面性の原則
- 意識性の原則
- 個別性の原則
- 継続・反復性の原則
があります。
1. 漸進性の原則
漸進性(ぜんしんせい)の原則とは、『トレーニングの強度や量は段階的に増加させなければならない』という原則のことです。もし急激に運動強度を増加させると、運動傷害(ケガ)を起こしてしまう可能性が高くなります。逆に、同じ負荷のまま続けていると体が刺激に慣れて効果が頭打ちになるため、少しずつ負荷を高めていくことが大切です。
2. 全面性の原則
全面性の原則というのは、『ある体力要素を向上させたいのであれば、できれば他の要素も同じ体力レベルにまで向上させた方がよい』という原則のことです。体力は色々な要素で構成されているので、できる限り全身・全要素をバランスよく鍛えた方が良いということです。特定の部位だけを鍛えると、ボディバランスが崩れたり、一つの関節に負担が集中してケガのリスクが高まったりします。
3. 意識性の原則
意識性の原則というのは、『トレーニングを行うには、その目的をよく理解しておく必要がある』という原則のことです。何のためにトレーニングをやっているのか、どの筋肉に効いているのかを理解しないまま行っていると、得られる効果は少なくなってしまいます。
4. 個別性の原則
個別性の原則というのは、トレーニングは『個人的な身体的・精神的特性』に応じて行わなければならない、という原則のことです。年齢、性別、体力レベル、目的は人それぞれ異なるため、他人のメニューをそのまま真似るのではなく、自分に合った内容に調整することが大切です。
5. 継続・反復性の原則
継続・反復性の原則とは、『トレーニングの効果を得るためには、継続的・反復的に行わなければならない』という原則のことです。トレーニングの効果は一朝一夕(いっちょういっせき)に得られるものではなく、長期間継続して実施することで、初めて目に見える大きな効果を期待することができます。
なぜ原理・原則を知るとトレーニングが変わるのか
3原理・5原則は、ばらばらの知識ではなく、互いに関係し合っています。例えば「過負荷」で日常以上の刺激を与え、「漸進性」で少しずつ負荷を高め、「反復性」で継続し、「可逆性」を踏まえてやめないようにする——という具合に、これらを組み合わせることで初めて安全かつ効率的に筋肉を成長させられます。逆に、どれか一つでも欠けると、ケガをしたり、成長が頭打ちになったりしがちです。やみくもに頑張るのではなく、これらの原則に沿って「自分の目的に合った負荷・種目・頻度」を設計することが、遠回りに見えて一番の近道になります。
トレーニングの原理・原則のまとめ
トレーニングには、基礎となるルーの法則のもとに、3つの原理(過負荷・可逆性・特異性)と5つの原則(漸進性・全面性・意識性・個別性・反復性)があります。日常以上の負荷を、少しずつ・全身バランスよく・目的を意識して・自分に合った形で・継続的に行うことが、安全で効果的なトレーニングのカギです。これらを理解してメニューを組むことで、ケガを防ぎながら効率よく筋肉を鍛えることができます。
参考文献・出典
・厚生労働省 e-ヘルスネット「レジスタンス運動」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・日本ストレングス&コンディショニング協会(JATI)https://www.jati.jp/




