インクライン・ダンベルカール(Incline dumbbell curl)
インクライン・ダンベルカールとは主に上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)、上腕筋(じょうわんきん)、腕橈骨筋(わんとうこつきん)、回外筋(かいがいきん)を鍛える筋トレ種目です。
インクライン・ダンベルカールは「上腕二頭筋長頭・力こぶの山を作る種目」と呼ばれる、インクラインベンチ(背もたれ45度)に座って肩関節が過伸展した状態から行うカール種目です。
上腕二頭筋を「伸張位」で収縮させることができるため、特に長頭(力こぶの山)の発達に直結する種目として人気です。
このページではインクライン・ダンベルカールの正しいフォーム、動作のポイントや注意点、呼吸法などを初心者の方でも理解しやすいように画像、動画つきで解説します。また、目的別(筋力アップ・筋肥大・ダイエット)に応じた重量、回数、セット、長頭腱炎への注意まで包括的にご紹介します。
この記事で分かること:
・インクライン・ダンベルカールで鍛えられる筋肉
・正しいフォームと動作のポイント
・呼吸法と目的別の重量・回数
・上腕二頭筋長頭腱炎への注意
・関連トレーニング種目
強化される筋肉
上腕二頭筋長頭を選択的に強化
インクライン・ダンベルカールの特徴:
① 主働筋:上腕二頭筋長頭
・「力こぶの山」を作る
・外側の頭
・インクライン姿勢で最大ストレッチ
② 協働筋:上腕二頭筋短頭
・「力こぶの厚み」
・本種目では補助
③ 協働筋:上腕筋・腕橈骨筋
・肘関節屈曲を補助
④ 協働筋:回外筋
・前腕回外
「上腕二頭筋長頭」の特殊性:
なぜインクラインで長頭が刺激されるか:
① 長頭の解剖
・肩甲骨の関節上結節から起始
・「外側」の頭
・「力こぶの山」を作る
② インクライン姿勢の効果
・肩関節が伸展位
・上腕が後方に
・長頭が最大ストレッチ
③ 結果
・長頭の選択的強化
・「力こぶの山」UP
・立体的な腕
「伸張位での収縮」の意味:
筋肥大への効果:
① 伸張位とは
・筋が引き伸ばされた状態
・「ストレッチ」状態
② 伸張位での収縮の効果
・筋線維への刺激が大
・「筋肥大」に直結
・研究でも証明
③ プリチャーカールとの違い
・プリチャー=短頭・短縮位
・インクライン(本記事)=長頭・伸張位
・両方併用で完璧
関節の動き

肘関節においては屈曲、回外筋、上腕二頭筋が回外動作に関与します。
運動の方法


- インクライン・ベンチの背もたれの角度を45度位にし、インクライン・ベンチに腰掛けます。
手のひらが体側を向くようにダンベルを構えます。このとき両腕は床面に対し下垂させ、両肘を伸ばしきる一歩手前くらいでダンベルを保持します。(写真1) - 両肘を身体に固定しながら、肘関節を中心にダンベルの巻き上げ動作を行います。両肘をゆっくりと曲げ、前腕部と上腕部のなす角が90度くらいのところにまできたら前腕部を捻ります。(手のひらが上向きになるように)(写真2)
- 同じ軌道を通りながらスタート位置までダンベルを降ろします。
このとき肘が伸びきる一歩手前で運動動作を終えるようにします。 - 以後、運動動作を必要回数繰り返します。
※ この種目は上腕ニ頭筋の長頭腱炎を起こす可能性の高いエクササイズなので気をつけて行いましょう。(上腕ニ頭筋という筋肉は、腕の力こぶをつくる筋肉で、この筋肉は、途中から長頭腱と短頭腱のふたまたに分かれている為、二頭筋という名がついています。上腕ニ頭筋は、肩甲骨から起こって前腕の骨に付着していますが、長頭腱は、途中で上腕骨の結節間溝という溝にはまりこみその上を靭帯が被って、ちょうど、トンネルの中を通るようなかたちになっています。 ここで、長頭腱は約90度方向転換をしており、その為に結節間溝部で摩擦等の刺激が加わり炎症がおきやすくなっています。
「腕を下垂させる」が重要
インクライン・ダンベルカールの基本姿勢:
① インクライン姿勢
・背もたれ45度
・肩関節が伸展位
② 腕の位置
・床面に対し下垂
・真下に垂らす
・体側より後方になる
③ この姿勢の意味
・上腕二頭筋長頭がストレッチ
・最大の刺激を得られる
④ 失敗例
・腕を前方に出す=通常のダンベルカールに
・背中を浮かす=姿勢崩壊
・反動を使う=長頭腱への負担大
「90度で回外」:
ダンベルカールと同じく:
① 開始位置
・手のひらが体側(ニュートラル)
② 90度で回外
・手のひらが上向きに
・上腕二頭筋の最大収縮
③ 効果
・長頭+短頭+回外筋を同時刺激
呼吸方法
- 呼吸は重量が軽いときにはダンベルを巻き上げるときに息を吐き、下げるときに息を吸います。
- 高重量を用いる場合は、開始姿勢で息を吸い、息を止めながらダンベルを巻き上げ、ステッキングポイントを越えたら息を吐き出します。
ONE-POINT
- この種目は肩関節が過伸展した状態から行うエクササイズなので上腕ニ頭筋の伸張位で収縮させることになります。一般的に背もたれの傾斜角は45度くらいといわれているのですが、肩関節の柔軟性に応じ角度を調整した方が無難だと思います。
- ダンベルは左右交互(オルタネイト)に巻き上げて行っても良いでしょう。
「背もたれ角度」の調整
肩関節の柔軟性に応じた角度:
① 標準:45度
・一般的な傾斜
・長頭が適度にストレッチ
② 急な角度(30〜40度)
・長頭が最大ストレッチ
・肩関節柔軟性が必要
・上級者向き
③ ゆるい角度(55〜60度)
・長頭ストレッチが軽め
・初心者・肩柔軟性低い方
・長頭腱炎リスク低
④ 推奨
・初心者=60度から
・慣れたら45度
・痛みがあれば角度を緩める
「オルタネイト版」の利点:
左右交互動作:
① 利点
・集中力UP
・マインドマッスルコネクション
・左右差解消
② 推奨
・初心者=オルタネイト
・中・上級者=両方併用
反復回数とセット数
目的別に応じた反復回数とセット数をご紹介します。
- 筋力アップ=運動動作が6〜8回で限界を迎えるような高負荷
- 筋肥大=運動動作が10〜12回で限界を迎えるような中負荷
- ダイエット=運動動作が15回以上反復可能な低負荷
※初心者の方は正確なフォームで10〜15回程度反復できる重量で行います。
※セット数は3〜4セットくらいで行います。
「軽めの重量で安全に」:
インクライン・ダンベルカールの重量設定:
① 通常のダンベルカールより軽め
・長頭腱炎リスクのため
・「効かせる」のが優先
② 一般的な目安(片手)
・初心者=3〜6kg
・中級者=6〜10kg
・上級者=10〜15kg
③ フォーム優先
・重量より正確性
・「伸張位」を意識
インクライン・ダンベルカールと「長頭腱炎」予防
注意点を補強:
「上腕二頭筋長頭腱炎」とは:
肩関節の代表的な障害:
① 病態
・長頭腱の炎症
・結節間溝での摩擦
・反復ストレスが原因
② 症状
・肩前面の痛み
・腕を持ち上げると痛む
・夜間痛
③ 好発する人
・40代以降
・野球・テニス選手
・インクライン種目を頻繁に行う方
「予防策」:
長頭腱炎を防ぐために:
① 軽重量から
・「効かせる」を優先
・高重量は禁物
② 背もたれ角度を調整
・肩柔軟性に応じて
・痛みがあれば角度緩める
③ ローテーターカフ強化
・エクスターナルローテーション等
・肩関節の動的安定UP
④ ウォームアップ
・ショルダーサークル
・軽いダンベルカールから
⑤ 痛みがあれば即中止
・無理しない
・整形外科医に相談
「長頭腱炎の方は禁忌」:
該当者は本種目を避ける:
① 既に長頭腱炎の方
② 肩前面に痛みがある方
③ 巻き肩・猫背で肩柔軟性低下の方
④ 四十肩・五十肩経験者
これらの方は「プリチャーカール」等、肩関節への負担が少ない種目を選びましょう。
「腕トレメニュー」での位置づけ:
理想的な順序:
① バーベルカール(高重量・パワー)
② ダンベルカール(中重量・回外)
③ インクライン・ダンベルカール(長頭強調・本記事)
④ プリチャーカール(短頭強調)
⑤ ハンマーカール(腕橈骨筋・上腕筋)
⑥ コンセントレーションカール(フィニッシャー)
「長頭 vs 短頭」の使い分け:
完璧な腕作り:
① 長頭(「山」)
・インクライン・ダンベルカール(本記事)
・伸張位で強化
② 短頭(「厚み」)
・プリチャーカール
・短縮位で強化
③ 両方併用
・立体的な力こぶ
・「完璧な腕」
「ボディビル黄金期」の理論:
長頭強化の歴史:
① 「山の高い力こぶ」
・美的に最高
・「ピーク」と呼ばれる
② 長頭の発達がポイント
・インクライン種目が定番
③ 現代
・「インクライン・ダンベルカール」=必須
・ボディビルダーの定番
「上腕二頭筋長頭」の機能:
日常・スポーツでの役割:
① 肘関節屈曲+肩関節屈曲
・「2関節筋」
・多機能
② スポーツ動作
・水泳のキャッチ動作
・ボートを漕ぐ
・クライミング
③ 弱化の影響
・肩関節障害のリスク
・長頭腱炎
関連する効果:
① 上腕二頭筋長頭の発達
・「力こぶの山」UP
・立体的な腕
② 上腕筋・腕橈骨筋・回外筋の発達
・腕全体の太さUP
③ 「伸張位での収縮」
・筋肥大効果UP
④ ボディメイク
・美しい力こぶ
関連する障害の予防+注意:
① 上腕二頭筋長頭腱炎
・最大のリスク
・軽重量+角度調整
② インピンジメント症候群
・肩関節障害の方は禁忌
③ 手首痛
・ダンベル使用でリスク軽減
YOU TUBE
関連種目
■ フリーウエイト・トレーニング■
【バーベルカール・ダンベルカール・プリチャーカール・ハンマーカール・コンセントレーションカール・リバースカール・トライセプスエクステンション・ダンベルキックバック】
■ マシントレーニング■
【ケーブルカール・マシンカール】
■ 自重トレーニング■
【チンニング(逆手)】
まとめ
インクライン・ダンベルカールについて解説してきた内容を整理します。
・上腕二頭筋(特に長頭)+上腕筋+腕橈骨筋+回外筋を鍛える
・「上腕二頭筋長頭・力こぶの山を作る種目」
・「単関節運動(アイソレーション種目)」+伸張位
・インクラインベンチ背もたれ45度(柔軟性に応じて調整)
・手のひらが体側=開始位置(ニュートラルグリップ)
・両腕を床面に対し下垂
・両肘を伸ばしきる一歩手前
・両肘を体に固定
・肘関節を中心に巻き上げ
・90度で前腕を回外(手のひらが上向きに)
・戻す時も肘伸ばしきる一歩手前
・軽重量=巻き上げで吐き、下げで吸う
・高重量=バルサルバ法
・目的別:筋力6〜8回/筋肥大10〜12回/ダイエット15回以上
・初心者は10〜15回×3〜4セット
・軽重量から始める
・長頭腱炎のリスクに注意
・オルタネイトも有効
インクライン・ダンベルカールは上腕二頭筋長頭の選択的強化+「力こぶの山」作り+伸張位での収縮+筋肥大効果に直結する応用種目です。インクライン(長頭)+プリチャー(短頭)の組み合わせで、上腕二頭筋を多角的に発達させ「完璧な力こぶ」を作ることができます。ただし長頭腱炎リスクが高いため、軽重量+角度調整+ローテーターカフ強化を併用し、痛みがあれば即中止しましょう。腕を床面に下垂+90度で回外+肘を体に固定+正確なフォームでインクライン・ダンベルカールの効果を最大化しましょう。
参考文献・出典
・厚生労働省 e-ヘルスネット「運動・トレーニング」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・日本ストレングス&コンディショニング協会(JATI)https://www.jati.jp/
・日本臨床スポーツ医学会「スポーツ障害・肩関節障害」http://www.rinspo.jp/
・日本整形外科学会「肘関節疾患・肩関節疾患」https://www.joa.or.jp/
・日本肩関節学会「肩関節疾患・上腕二頭筋長頭腱炎」https://katakansetsu.jp/





