『スロートレーニング』(スロトレ)とは、文字通り、ゆっくりとした運動動作で行うトレーニングメソッド(方法)の一種です。
例えばバーベル・ベンチプレスなら3〜5秒かけてゆっくりとバーを胸に降ろし、そのまま1秒静止させたのちに、3〜5秒かけてゆっくりとバーを元の位置に戻すというやり方でウエイトトレーニングを実施します。
スロートレーニングは他のトレーニングメソッドとは異なり、終始、運動動作をゆっくりと行い、また用いる重量は基本的に軽め(とはいえ、最大挙上重量の40%以上の負荷は必要です)というのが大きな特徴です。
このため通常のウエイトトレーニングと比べると関節や靭帯にかかるストレスが極めて少ないので『体力にあまり自信がない』という低体力者の方や高齢者、また『血圧が少し高め』だという方にも是非、お勧めしたいトレーニングメソッドです。
スロートレーニングの特徴
スロートレーニングのトレーニングの特徴はそれだけではありません。
スロートレーニングは文字通りゆっくりとした運動動作を行うため、他のトレーニングメソッドに比べ、筋中内に疲労物質である乳酸が大量に留まるのが大きな特徴です。
ご存知の方も多いかもしれませんが、乳酸とGH(人成長)ホルモンにはある種の相関関係があり、筋中内の乳酸の発生量が多くなると比例してGHホルモンの分泌量も増えるのです。
GH(人成長)ホルモンは文字通り、人の成長を促進させたり、筋肉を肥大させる働きを持っているホルモンです。
このように乳酸の蓄積量を増やし、筋肥大を促すという方法は加圧トレーニングでも応用されています。
基本的にスロートレーニングと加圧トレーニングは理論的なものは同じなのですが、スロートレーニングの場合、加圧トレーニングとは異なり四肢にバンドを巻きつけて血流の流れを制限するようなことはしません。
そのためスロートレーニングは加圧トレーナーなどの専門家を必要としませんし、また、血液の流れを調整するバンドを四肢に巻きつけることもありません。
因みにGH(人成長)ホルモンの効果は『人の成長』や『筋肉を肥大させる』だけではありません。
GH(人成長)ホルモンは別名『若返りホルモン』とも言われいて、人間の身体の若返りに一役かっているホルモンでもあります。
つまり体内にGH(人成長)ホルモンが大量に分泌されることにより、『肌を若く、みずみずしい状態に保たせる』ことができるのです。
更にGH(人成長)ホルモンが分泌されて筋肉量が増えれば『基礎代謝量』を増やすことが期待できます。
基礎代謝量とは”人間が生命を保つ上で必要最低限のエネルギー”と定義づけられており、一般に筋肉量が多い人ほど基礎代謝量が多い傾向にあります。
つまり、太りにくい体質にするためには筋肉量を増やし、基礎代謝量を高めることがとても重要なファクターになります。
スロートレーニングの実施上の注意点(3大ポイント)
スロートレーニングを効率よく行うためには下記の3つのポイントを踏まえて実施しなければなりません。
- 正しいフォームで実施する
- 運動動作中は常にゆっくりとした動作で行う
- 運動が完全に終了するまでは関節を伸ばしきらない(ノンロック)
1.正しいフォームで実施する
これは何もスロートレーニングに限ったことではありません。
ウエイトトレーニングの運動効果を安全に効果的に得たいのであれば、トレーニングフォームを正しく行う必要があります。
2.運動動作中は常にゆっくりとした動作で行う
スロートレーニングはネガティブ(筋肉が引き伸ばされながら力を発揮する運動様式)な動きを3〜5秒程度かけ行い、そのまま1秒静止させたのちに、ポジティブ(筋肉が収縮しながら力を発揮する運動様式)な動きを3〜5秒程度かけて行いことを基本とします。(一般的なウエイトトレーニングに比べ、かなりスローテンポで運動動作を行います)
このとき使用する重量は1RM(最大挙上重量)の40%以上の負荷を用いるようにしてください。
運動動作中は常に使用している筋肉を意識しながら行うようにするととても効果的です。
3.運動が完全に終了するまでは関節を伸ばしきらない(ノンロック)
『ノンロック』とは先のバーベルベンチプレスを例で説明するとポジティブな動きの終動で肘を伸ばしきらない(関節をロックしない)ようにするという意味です。
関節をロックしてしまうことで使用する筋肉の緊張が緩んでしまいます。(これは筋肉を休ませているのと同じことになります)
スロートレーニングの効果を最大限に得るためには所定の回数をやり終えるまでは決して筋肉の緊張をとかないように行うことを心掛けましょう。
スロートレーニングで用いられるトレーニング種目
スロートレーニングで用いる種目を参考までに下記に載せておきます。
ご紹介する種目はあくまでも一例なので適宜変更してください。
- バーベル・スクワット
(臀部、大腿部) - バーベル・ベンチプレス
(胸部、肩部、上腕部後面) - ベントオーバーローイング
(背部、上腕部前面) - バックプレス
(肩部、上腕部後面) - エキセントリックアブドミナル・アームフォワード
(腹部) - ライイング・バックアーチ
(下背部)
スロートレーニングの実施上の注意点
スロートレーニングに対して難しそうというイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、実際にやってみると比較的簡単にできるというのがこのメソッドの特徴です。
しかし、簡単にできるというのはイコール”楽にできる”という意味ではありません。
確かに用いる負荷は通常のウエイトトレーニングと比べると軽いかもしれませんが、今までウエイトトレーニングをしていなかった方にとってみれば充分な負荷と言えますし、普段、定期的にウエイトトレーニングを行なっている方でも『スロートレーニング』の乳酸の蓄積量とそれに伴う痛みには最初は驚かれると思います。
しかし、継続的にトレーニングを行なうとやがて初期の頃ほど筋肉痛を感じなくなるようになります。
この頃には最早扱っている負荷が適切とは言えないので様子を見ながら徐々に使用重量を増やして行きましょう。
スロートレーニングで最大限の運動効果を得るためには他のトレーニングメソッドと同様、トレーニングした部位に対して48時間程度の休息を挟むようにしましょう。
連日、同じ筋肉に刺激を与えるとオーバーワークに陥ってしまい筋肉の成長の妨げになってしまうからです。
このようにスロートレーニングはゆっくりとした動きで筋肉の低酸素状態を作り出し、ヒト成長ホルモンの分泌量を促すことを目的としたトレーニング方法です。